赤 ず き ん
人気アイドルの『赤ずきん』こと「赤ずきんちゃん」は、マネージャーさんが熱を出して寝込んでいると聞いて、アパートまでお見舞いに行こうと思いました。実は、赤ずきんちゃんは、マネージャーさんに恋心を抱いていたのです。
「これを機に、ふたりの仲を発展させて、ゆくゆくは、あんなことやこんなことを... キャー! 恥ずかしい!!!」
赤ずきんちゃんは、隣の部屋まで聞こえるほどの大きな独り言を言い、ここには決して書けないような妄想を膨らませながら、お見舞いに行くための身支度をしていました。
その独り言を聞いていたADのオオカミさんは、大激怒です。
「マネージャーのヤロー。オレの赤ずきんちゃんと、イチャこくつもりか!」
※イチャこく/イチャイチャするの最上級
肉球を握りつぶしながら怒りに震えていたオオカミさんでしたが、ふと、名案がひらめきました。「そうか! オレがマネージャーになり代われば、赤ずきんちゃんとイチャこけるんだ!!」
そこでまずオオカミさんは、赤ずきんちゃんの楽屋に行き「マネージャーは隣町のケーキ屋が好き」とうそをついて、わざと時間のかかるお土産を買いに行かせ、次に、マネージャーさんのアパートに行きました。
部屋に入るなり、病院での精密検査の必要性を説きはじめ、何が起こっているのかよく分かっていないマネージャーさんを無理やり病院に連れて行って、検査に時間をかけるよう、お医者さんに賄賂を渡して帰りました。
「... ふぅ。あとは、赤ずきんちゃんを待つだけだな」
心地よい疲労感に包まれながら、マネージャーさんのベッドに入って赤ずきんちゃんを待っていると、玄関のベルが鳴りました。
「は~い、どうぞ。玄関は開いているよ」
「こ、こんにちは... おじゃまします」
マネージャーさんの部屋に入った赤ずきんちゃんは、オオカミさんとは知らず、そばに近づきます。
「マネージャー、体調はどう?」
「ありがとう。あまり、良くないね」
「あれ? マネージャー、声が変わったの?」
「それはね、風邪をひいているからさ」
そう言うと、オオカミさんは、手を口に当てて、ゴホゴホッ と咳き込むふりをして見せました。
「あれ? マネージャーの手って、こんなに大きかった?」
「それはね、ドラムを片手で掴めるように鍛えたからだよ」
「あれ? マネージャーの爪って、こんなに長かった?」
「それはね、ピックを忘れても、ギターが弾けるようにしているからだよ」
「あれ? マネージャーの口って、こんなに大きかった?」
「それはね、お前を食べてしまうからさ!!!!!」
そう言って、オオカミさんは、赤ずきんちゃんを布団の中に引きずり込んでしまいました。
翌朝...
ベッドの上では、オオカミさんが煙草をふかしています。
その横では、裸の赤ずきんちゃんが、オオカミさんの胸毛を毛づくろいしながら
「... 童話のとおりになっちゃった」
と言って、恥ずかしそうに微笑みました。
(おしまい)