浦島太郎

『カメ』が波に揺られながら煙草をふかしていると、砂浜で子どもたちにいじめられている『浦島太郎』の姿が見えました。

カメは「おい、やめねえか!」と言って子どもたちを追い払い、なぜ、いじめられていたのか、浦島太郎に聞きました。すると、砂浜で弾き語りをしていたら、子どもたちがやってきて自分の音楽にケチをつけた。そこでカチンときてケンカをふっかけたが、返り討ちにあっていた... とのことでした。

「暴力はいけねぇ。でも、波に揺られながら聞いていたが、おまえさんの音楽は確かにひどすぎる。まだ若いせいもあるが、おまえはもっと『世の中』を知らないといい音楽は作れねぇぜ」

カメが言うと、浦島太郎はふてくされて、なにやらブツブツ言っています。

「よし、分かった。おれが『世の中』ってやつを教えてやる」

カメは、そう言うと、嫌がる浦島太郎を無理やり『竜宮城』というオトナのお店に連れていきました。

「おう! 乙姫。この世間知らずに『世の中』を教えてやってくれ」

「あらあら、かわいい坊やだこと。じゃあ、こちらにいらっしゃい」

そう言って浦島太郎をボックス席に招待した乙姫は、男心をくすぐすおもてなしを始めました。最初は緊張していた浦島太郎も、次第にハメをはずし... ついには、豪遊してしまいました。

どのくらい、時が経ったのでしょうか。

ふと気がつくと、竜宮城の店内は、後片付けを始めています。

「あら、目が覚めた?」と言って乙姫が指を鳴らすと、奥から、玉手箱を持った黒服のヒラメが現れ、「こちらになります」と、玉手箱のふたを開けました。

すると、白い煙とともに、一枚の、見たこともない金額が書かれた領収書が現れました。浦島太郎は、何が起きているのかさっぱり わかりません。

その様子を遠くから見ていたカメは、浦島太郎に近づき、肩に手を乗せ「これが『世の中』ってやつだよ。そして、これが授業料ってわけだ」と言って、領収書をちらつかせながらニヤリと笑いました。

こうして、浦島太郎は飲食代の返済のため、竜宮城に住み込みで働くことになり、返済を終えた頃には初老をむかえ、外の世界も、すっかり変わっていました。

​(おしまい)

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