CHERNOBYL(チェルノブイリ)/HBO制作ドラマ, 2017年

もっとも見ておくべきドラマー。そう断言したくなるのがHBOが制作した5話構成の本作だ。史上最悪の人災の1つであるチェルノブイリ原発事故。当日と前後の経緯、そこに生きた人々の苦悩と犠牲の物語が、脚色を交えながらも非常にリアルに描かれている。

中心となるのは、ジャレッド・ハリス演じる、ソビエトの主要な核物理学者であったヴァレリー・レガソフ。エピソード1の冒頭からショッキングな場面が展開され、終始、まるでドキュメンタリーを見ているような緊迫感、重厚感、人間描写が続く。

1986年4月26日1時23分。ソビエト社会主義共和国連邦の構成国、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国のチェルノブイリ原子力発電所4号炉で、その事故は起きた。

 

当時7歳だった私は、連日テレビに映し出されていた灰色の空と、黒煙が立ち昇る光景をおぼろげながら覚えている。残像のようなその画だけが私の中の「チェルノブイリ」だったが、本作がイメージを刷新してくれた。

なぜ、どんな経緯で事故が起きてしまったのか。そこにいた人々がどのような思惑を持っていたのか。国家体制がどうであったのか。このドラマに事故の背景を知る素地を作ってもらったような気がする。

​特筆すべきは、リアルさを追求した映像表現と繊細な人間描写。画面の向こうで、今まさに事故が起きていると錯覚するほどの迫力に飲み込まれ、登場人物たちが英語を話していることでやっと「ドラマなんだ」と引き戻される。エピソード5(最終話)の結びでは実際の写真や映像が使われている。

 

レガソフの専門家としての絶望と人間としての苦悩、そこに関わる人々の感情、体制側と労働者側の姿。責任放棄すべく逃げ続ける人間と、起きてしまった事故の被害を少しでも抑えるため自己犠牲もいとわない人々―

 

レガソフが率いた人物たちの働きと自己犠牲がなければ、4号炉に続いて1~3号炉も次々に爆発し、その甚大な放射能被害によって、今の世界の姿は決してなかっただろう。背筋が凍る。

現在も各国が原発を所有している。日本も3.11を経験して尚、ずいぶんと他国に売り続け、国内では「電力が逼迫」と再稼働への布石が打たれはじめている。

けれど、私たちは、どんなに頑張ったところで、この小さな1つの惑星を借りてともに暮らす、取るに足らない存在なのだ。動植物を、環境を、宇宙を支配して良い存在ではない。そのことを改めて痛感させられる作品だった。

2021.01 AKi

作品紹介

CHERNOBYL(チェルノブイリ)

 

脚 本:クレイグ・メイジン

監 督:ヨハン・レンク

出演者:ジャレッド・ハリス 他

​制 作:HBO

公式HP  https://www.hbo.com/chernobyl

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