地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」細谷 功 

なたは、日々の暮らしの中でどこまで本当に自分の頭を使って考えているだろうか? いま「考える」重要性が、かつてないほどに高まっている。

 

これは、本書の冒頭の一文だ。著者がインターネット情報への過度の依存の危険性を提起したものである。特に指摘しているのは、情報への過度の依存が思考停止を招く可能性がある点。この問題を克服するために「地頭力」と「フェルミ推定」をキーワードとして「考える力」を見つめ直し、その方法論を体系的をまとめあげたのが本書である。

 

「地頭力」とは何か? この言葉は、人材採用やコンサルティング業界では比較的頻繁に使われているが、著者は「あらゆる問題を解決する上での基本となる考える力」と再定義して使っている。

 

本書では、この地頭力の構成要素を分解して各要素ごとの特性を説明していく。また、その具体的な訓練のツールとして「フェルミ推定」を紹介しながら、地頭力の鍛え方を教えてくれる構成になっている。「地頭力」の構成要素を簡単に説明すると、以下の3層構造になる。

 

第1層:知的好奇心

第2層:論理的思考力と直感力

第3層:仮説思考力・フレームワーク思考力・抽象化思考力

 

ここで大事なポイントは第3層の領域であり、この領域を鍛えることが地頭力の向上につながることになる。第3層をもう少し具体的に説明すると、

 

○仮説思考力とは「結論から考える」こと

○フレームワーク思考力とは「全体から考える」こと

○抽象化思考力とは「単純に考える」こと

 

詳細は本書にゆずるが、地頭力の思考形式は「結論から」「全体から」「単純に」の3つに集約される。このキーワードを意識しながら物事を考えていくだけでも、今までと違った思考ができるようになるのではないかと思っている。では「フェルミ推定」とは何か? 本書では以下の例題を通してフェルミ推定の特性と考え方を説明している。

 

「日本全国に電柱は何本あるか?」

※解答に際してのルールは以下の3つ

① 制限時間は3分(厳守)

② 電卓・PCなどの使用不可(紙と筆記用具のみ)

③ 一切の情報の参照不可

 

自分も始めてこの問題を見た時は、どこから手をつければよいのかわからなく、あっという間に3分が過ぎてしまった。

このフェルミ推定は主に面接試験等の場面でよく用いられているらしい。その理由は大きく3つある。第1に質問の内容が明快かつ身近なものである。第2に「正解がない(あるいはあったとしても出題者自身も知らない)」ことで、解答者には純粋に考える「プロセス」が問われる。第3に「簡潔でありながら問題解決の縮図である」という理由からだ。

 

この第3の理由に地頭力を構成するすべての要素が含まれており、本書でもこの例題を通して、地頭力のどの要素をどのように活用すればこの例題が解けるのか、説明していく形式をとっている。

 

改めて考えてみると、現実で起こる諸問題とは上記のフェルミ推定の例題のように、とらえどころがなく、どこから手をつけてよいのかわからないことが多いのではないだろうか。このような現実的問題に対して本書が唱える「地頭力」という考え方は大変有効だ。

 

ただ最近このようなマニュアル本のようなものを読んでいつも思うのは、「考え方」も大事だが、まずその「考え方」と使おうとする自分自身の「在り方」が重要になるのではないか? ということだ。そして、このようなマニュアル本を、仕事や私生活といった外的条件に適用しようとすることは多いが、実は、自分の思考や感情といった内的条件にも適用した方がよいのではないかと考えるようになった。

 

自分の場合、とても素晴らしい考え方や価値観に出会って、その考え方や価値観を取り入れ、自分の行動に落とし込もうとしたとたん、何か別の力が働いて、その考え方や価値観を「他人事」として捉えてしまい「彼の考え方は素晴らしい」で終わってしまうことが多々ある。そのため、せっかくよい方法を知っても、それを行わないという、ある意味で矛盾した行動をとってしまう自分がいるのだ。

 

なぜ自分がこのよう考え方をしてしまうのかについて、他人にではなく、自分自身に説明する時に、この「地頭力」の考え方を適用してすれば、もう少し行動に起こせるのではないかと考えて現在奮闘中である。

 

それにしても、思考の整理整頓の仕方、考え方の視点の位置取り、問題の分解や合成の仕方などを、整理して系統立てて説明してくれているので、本書は、もはや単純なマニュアル本以上の価値をもっていると思う。おすすめである。

GAJIO 2021.07

書籍紹介

地頭力を鍛える

問題解決に活かす「フェルミ推定」

 

細谷 功 著

第一刷 2007年12月20日

​発行所 東洋経済新報社

地頭力を鍛える, フェルミ推定, 細谷功, 感想