自分の時間 1日24時間でどう生きるかアーノルド・ベネット 

書は、時間の考察本である。いや、提案書といった方が正しいかもしれない。書かれたのは、1902~1908年の間と推測されている。約120年前に書かれた本だが、現代の時間管理で言われている内容がすでに網羅されているところをみると、時間管理における古典的名著だ。

名著と考える所以は、ページ数が少ないわりに(130頁ほど)、内容の質が高く、シンプルでわかりやすいこと。時間を有効活用したいと考える人に対し、時間の価値と特性に気づいてもらい、時間における視点(重要度)を変え、個人的に小さく設定した時間の過ごし方を、ただやる。ということが書かれている。もちろんそのことに対する理由と方法、なぜ望んだ結果を得られていないのかについても各章ごとに述べている。

“本書は1日を24時間で暮らすのに何の不都合も感じていない人に薦める本ではない。年月は次から次へと流れ去っていくのに、いまだに自分の生活をしかるべき軌道に乗せられずにいるという思いにとりつかれ、程度の差はあれ悩んでいる大勢の人々に向かって、私は語りつづけていきたいと思う”

 

“「時間が与えられている」ということは、実のところ毎日奇跡が起こっているようなものであり、よく考えればまったく驚くべきことなのである。朝、目覚める。すると不思議なことに、あなたの財布にはまっさらな24時間がぎっしりと詰まっている。そして、それがすべてあなたのものなのだ。これこそ最も貴重な財産である”

“朝10時から夕方6時までの勤務時間があくまで本当の意味での「1日」だとみなし、勤務時間の前の10時間とあとの6時間は、単なるプロローグとエピローグに過ぎないと思っている。1日の3分の2の時間を、単に3分の1を占める勤務時間に付随している時間に過ぎないとしてしまうなら、完全に充実した1日を過ごすことなど、どうやって望めようか。

“人間の精力は、日常の仕事にすべてを吸いとられてはならないのである。では、どうするべきか?はっきりしているのは、頭を働かせて、何とかあなたの情熱を日常の仕事だけですべてを使いきってしまわないようにすることだ。あなたのエンジンを日常の仕事に使う前に(あとではない!)、まずそれ以外の何かに使うのだ”

“何よりもあなたに注意しておきたいのは、意気込みばかりが高じないように気をつけることである。(中略)初めからあまり多くのことを企てないようにしよう。失敗者の多くは、あまりに多くのことを企てすぎて失敗したのだ”

 

“実際のところ、あなたが「やりたい」と思っていたことが何であれ、楽なやり方、王道などといったものは存在しない。24時間という与えられた時間の中で、充実した快適な1日を過ごせるように生活を調整する際に心得ておくべき最も重要なことは、そうすることがいかに至難のわざであるか、そのためにいかに多くの犠牲を払い、たゆまず努力しつづけなければならないかを、冷静に悟ることである”

 

“『ただ始めさえすればいい』のだ。何もことさら魔法の始め方があるわけではない。プールの端に立って冷たい水の中に飛び込もうとしている人から、「どうやって飛び込んだらいいのでしょうか?」と尋ねられたら、こう答えるしかないだろう”

 

著者も言っているが、もっと自分の時間をもちたい、有効に活用したい、と思っている人には、とても参考になる本だ。実際、自分もそのひとりで「何かを始めたいのに始めていない」という焦りの感情が生じ、いつまでたっても心の平定が得られない状態があった。

 

結局、自分の時間とはなんだろう。まず制約(他者)からの解放がある。次に刺激と反応。これは他者からの刺激に反応するのではなく、自らの刺激に反応すること。言い換えれば自分の内なる声を聴ける状態だ。そして全能感があること、これは行動を起こしている時に、自分で自分をコントロールできているという実感を伴っているという状態だと思う。

 

つまり自分の時間とは、主体を自分にして、自ら発せられる感覚的・感情的刺激に反応し、それをコントロールして行動できる状態のことを言うのではないか。このコントロールして行動するという過程の認識が自分には不足していたが、本書を読んで解決の糸口が見つかったように感じている。「ただやる」。もしくは「何も考えず始める」だ。

GAJIO 2021.03

書籍紹介

自分の時間

1日24時間でどう生きるか

 

アーノルド・ベネット 著

渡部昇一  訳・解説

第一刷 2016年5月25日

​発行所 三笠書房

自分の時間, アーノルド・ベネット, 渡部昇一

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