​流れとかたち/エイドリアン・べジャン 

教用語のひとつに「縁起(えんぎ)」という言葉がある。個人的解釈では「この世界のすべてはつながっており、この世界のすべては関係性で成り立っている」という意味と理解している。

 この考え方は、まだ現代科学では解明しきれていない力とその動きの法則を、感覚的に捉えて表現しているモノであると思われるが、それゆえに「証明できないものは存在しない!」などの理由から非科学的という名前をつけられ、その存在を否定されがちな傾向が強いのではないかとも思っている。

 しかし、ここで、この「つながり」がつくる「関係性」とその「目的」を、科学的に解明しようと試みた本があるとすればどうだろう? それが今回紹介する「流れとかたち」だ。本書では、「コンストラクタル法則」という物理法則を提唱している。


 この法則の定義は「有限大の流動系が時の流れの中で存続するためには、その系の配置は、中を通過する流れを良くするように進化しなければならない」と書いてある。この定義を細かく説明してみると、

「有限大の流動系」とは、ひとつのまとまった機能的構造体のことを指す。具体的には、人・動物・植物・自然環境・機械・文化・スポーツ・政治・経済などのことを指す。つまり自然と人工。生命と無生命。行動と思考などであり、それは地球上でかたちをなすものすべてを対象にしている。

「時の流れの中で存続する」とは、本書の言葉を借りれば「生きている」状態を指している。「生きている」とは「抵抗に対して動きを促進するために形を生み出しているもの」と定義し、俗に言われる生命と無生命のすべてを指している。また「時の流れ」とは、時間というよりも向きと言えるものであり、ある一方向に向かって進む変化の総称である。

「その系の配置」とは、ある目的のために集まったひとつの集合体(システム)のことである。例えば、早く走るために進化した動物の体。物を冷やすために作られた冷蔵庫。国民の生活を豊かにする政治・経済など。簡単に言えば、仕組みや構造のことである。
 

「中を通過する流れを良くするように進化する」とは、より少ないエネルギーで、より効率よくエネルギーが流れるようになることである。

 つまり「コンストラクタル法則」とは「万物(すべて)はより良く流れるかたちに進化する」ことを表す法則だ。

 この法則の着眼点自体は斬新なものではない。あらゆる存在は時の流れとともに変化していくという考え方は東洋思想においては冒頭の「縁起」、西洋思想では「万物は流転する」などの視点で、昔からあったからだ。

 しかし、この法則の素晴らしい点は、その流れというものを「なぜそうなるのか」そして「これからどうなるのか」と、「今まで」と「これから」を予測可能にしたこと。そして、その予測が物理の世界のみならず、情報世界(心理や経済といった目には見えない動き)に対しても活用(汎用)できるようにしたことだろう。

 世界は「流れるモノ」「流れを作るモノ」「流れを動かすモノ」で成り立ち、その3組がひとつのまとまりを作ってひとつの機能体をつくる(系)。その後、多種多様な系が集まって、さらに大きな系や大きな流れをつくり、大量のモノを動かしていく。そこには、この流れを良くする「法則」がある。この法則を活用できれば、万物のあらゆる流れ(動き)を予測したり、作り出すことは可能だと示唆しているのである。

 ただひとつ、注意しなければいけないことがある。この法則は「自由があれば」(阻害されなければ)という制約がつくということだ。そのため個人的には「万物は自由を与えられれば、より良く流れるかたちに進化する」と言い換えたい。

 「何かをより良くしたい」「そのために今を変えたい」という動きは、人間だけでなく森羅万象すべてのモノに備わっている特性であり、その目的のために、世界は今日も動いている。そこには「流れ」と「流れを促進させる形」がある。個人的には、この形(デザイン)の重要性と意味について考える機会を持てたことが一番の収穫だった。物理だけでなく、経済や教育など様々な分野で応用可能な考え方であるだと思うので、ぜひ手に取ってみてほしい。 2021.09 GAJIO

書籍紹介

流れとかたち 

−万物のデザインを決める新たな物理法則−

エイドリアン・べジャン 著

J.ペダー・ゼイン 編集/柴田裕之 翻訳

第一刷 2013年8月22日

​発行所 紀伊國屋書店

流れとかたち, エイドリアン・べジャン, 万物のデザインを決める新たな物理法則