OODA(ウーダ)危機管理と効率・達成を叶えるマネジメント/小林宏之
危機管理の重要性は、コロナ禍では特に見直される要素のひとつだと思う。「危機」という言葉を「状況の変化」と言い変えた場合、自然界、人間社会は絶えず変化するものであり、その変化に対応できなかった種が滅んでいくことは地球の歴史が証明している原理・原則ではないかと思う。
この本は、そんな「危機管理」をテーマに扱った本であり、今、ビジネスの世界では当たり前になっている「 PDCAサイクル ※Plan(計画)Do(実行)Check(評価)Act(改善)」と比較して「OODA(ウーダ)」と呼ばれる軍隊で採用されてきた危機管理の手法を紹介している。
OODA(ウーダ)
Observe(観察)Orient(状況判断)Decide(意思決定)Act(行動)
改めて危機管理の概念を学んだ時に感じたことは、PDCAであれ、OODAであれ、前提条件は「誤りを見つけ改善していく」ことがポイントだということ。失敗しないことを目指すわけでも、成功することを目指すわけでもない。
そのため、矛盾するかもしれないが失敗を認める、認識するシステムとも言える。いや、自分の思考が本当に目の前の現実に適応できるのかをテストしたり、自分のやりたいことと現実とのマッチングを評価するためのツールとも言えるだろう。
本書は、危機管理の実例や考え方よりも「OODA(ウーダ)」という言葉の意味説明にかなり紙面が割かれている。しかし、例えば一言で「観察」といっても人によりそのやり方は様々だ。そのため「観察」とは、OODAにおいて、どんな態度、何を基準に行うことを言うのかをしっかり学べる内容になっている。これはとても大事なことだと思う。
「観察する」とは?「状況判断する」とは?「意思決定する」とは?「行動する」とは? それぞれ何をすることなのか、そこにどんな要素が含まれているのか。個人の価値観と照らし合わせながら読み進めると、さらにおもしろく理解が深まるのではないかと思う。
最後に自分が大好きな哲学、精神論的な話の中から。この本に書かれている「植物に学ぶ自律心」の一文を紹介して終わらせたいと思う。
“ 植物の心の内はわからないが、植物を見ていると、一度根を下ろした場所で「私はどんな状況であろうとも、ここで生きていく」という覚悟を感じる。雨が降っても降らなくても、風が吹こうとも、植物は「なんでこんなところに根を下ろしてしまったのだろう」とは思っていないはずだ。その状況を受け入れ、誰にも頼らず、いかに生き抜くかだけを考えているのではないだろうか。私は自律心が揺らぎそうなとき、植物のたくましさに勇気づけられてきた。”
2021.01 GAJIO