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​アウトプット大全・インプット大全/樺沢紫苑 

す 、書く、読む、聞く、は人間の知的生産活動における基本動作である。本書は、それに「考える」「行動する」「流れをつくる(習慣化する)」を加えた7つの活動の質を上げる方法を紹介している本である。

 

 これらは、程度の差はあれ、人が日常生活の中で意識的もしくは無意識的に必ず行っている行為である。言い換えれば人生の基本的活動要素とも言える。本書では、それを「OUTPUT」「INPUT」「フィードバック」という言葉で分類し、実生活ですぐに活用できることを目的に書かれた、いわば「知的生産活動の取り扱い説明書~基礎編~」ともいうべきものだ。

 

 そのため、考え方を学ぶというより、やり方を学ぶ本といってよいだろう。実際、本書では、やること(動くこと)の重要性をアウトプット7、インプット3『7:3』の割合で行うという基本原則を紹介している。 

 

 あえて言葉の定義をすれば「OUTPUT」とは出力、相手に向けて自分が発信する情報の流れのこと。「INPUT」とは入力、自分に向かって自分が受信する情報の流れのことである。「フィードバック」とは見直すことで、アウトプットとインプットが適切に行われたかを確認し必要に応じて修正を加えていく活動のことである。

 

本書の目次を列挙すると「OUTPUT大全」では「OUTPUTの基本法則」「話す」「書く」「行動する」「応用」。

「INPUT大全」では「INPUTの基本法則」「読む」「学ぶ」「見る」「インターネット」「会う」「応用」。

「OUTPUT」と「INPUT」の基本法則を紹介すると、「OUTPUTの基本法則」は ①2週間に3回使った情報は長期記憶される ②インプットとアウトプットをどんどん繰り返すことによって自己成長できる ③インプットとアプトプットの比率は 3:7(インプット3:アウトプット7)④アウトプットのあとに必ずフィードバックを行う(結果を見直す)

 

「INPUT大全の基本法則」は ①情報を得て、それを記憶にとどめることがインプット(なんとくはNG)②何かをインプットする時には、同時に目標を定める(その情報から何を得たいのか明確にする)③インプットとアウトプットは表裏一体である

「OUTPUT大全」「INPUT大全」ともに基本項目だけで約80項目あり、そこに総論と応用を加えれば、どちらも約100項目、約270ページほどの内容になっている。

 タイトルの「大全」が示すとおり、読みものというより辞書に近い。すべてを順番に読むというより、興味のあるテーマから読む、または調べるといった形での活用が望ましいと思う。

 

 素晴らしいのは本の構成と内容である。図やイラストを多用しながら、読者にいかにわかりやすく伝えるかを目指して作成し、単元ごとに関連知識を織り交ぜながら完結明瞭に、見開き2ページに収めている。内容に関しても、著者の経験と知識を仕事などの限定した局面だけでなく、人生全般に活用することを目的として書かれているので、どんな世代のどんな環境の人にも対応できる良書に仕上がってる。完成させるのは著者も編集者も大変だったと思うが、それ以上にとっても楽しかっただろうなと思ってしまうほどの意欲作であり力作だ。

 

 実際に自分に当てはめて考えてみると、インプットを意識することはあっても、アウトプットを強く意識することはなかったように思う。ましてフィードバックなどは言わずもがな。しかし、本書に書かれていた「インプットよりアウトプットの割合が大きい方が大事」であること、「インプットする時にはアウトプットを意識して学ぶ」こと、その際に「フィードバックを行う」こと。この基本原則を掘り下げていった時、自分にとって漠然とした問題である「なぜ自分は自分が思うように生きていけてないのだろう?」という問いに、1つの答えを見つけることができたと思っている。

 

 その答えに近づくきっかけになったひらめきは、インプット・アプトプット・フィードバックの流れは、人体で言えば、食物を食べて、栄養を吸収して、排する。という行為に似ていると思ったことだった。前者は心の成長を促し、後者は体の成長を促す。そしてこの一連のシステムは、その精度が高ければ高い人ほどよい流れとなるが、逆向きの働きをしてしまうと、人に害を及ぼす流れにもなりやすい。おそらく、自分にとってのインプット・アウトプット・フィードバックは、この流れのどこかの部分で機能不全を起こしているのではないか、きちんとした流れが作れていないのではないか、いや、そもそも、この流れを健全に保つことを自分は心がけてきたのだろうか? そんなことを考え始めて、上記の流れの見直し作業を始めたことが功を奏したのかもしれない。

 

 ただこれは私自身の場合で、万人にあてはまる事例ではないだろう。しかし、食生活や人体の健康のほかに、心と頭の状態改善や機能強化のためにも、改めて「話す」「書く」「読む」「聞く」「考える」「行動する」「流れをつくる(習慣化する)」を学び直すことは有効ではないかと考え、本書を紹介してみた。これだけの要素を1冊の本にまとめてあげている書籍は、なかなかない。もちろんここで書かれている方法や考え方がすべてではないし、中には見解が異なる内容も含まれるかもしれないが、それ以上に気づきや発見、そして行動の変化につながるヒントが詰まっている。 GAJIO 2021.07

書籍紹介

学びを結果に変えるアウトプット大全

樺沢紫苑 著

第一刷 2018年8月3日

​発行所 サンクチュアリ出版

学び効率が最大化するインプット大全

樺沢紫苑 著

第一刷 2019年8月3日

​発行所 サンクチュアリ出版

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