ユニークなクロージングには、急を要する際、インナーや靴下に限り、お世話になっている。先日も最低限のものを買いに銀座の旗艦店を訪れた。そう、1~4階までの4フロアがユニークなクロージングで埋め尽くされた、あの店だ。
ものすごい品数で、定番から有名デザイナーとのコラボ商品まで価格帯も広い。「ここで一着に数万円も出すなら、もはやデザイナーズブランドでちゃんと選んで買いたい」という心の声が響かなくもなかった。が、今日は定番インナーを買いに来たのだ。色鮮やかなワンピースに用はない。
お目当ての商品を発見した。... 陳列棚の一番上の段に。私が欲しい商品が、確かにそこに掛かっている。目線のずいぶん上の方だ。身長が低い私がいくら背伸びをして手を伸ばしても、かすりもしない高さである。
無理だ。
店内スタッフは、どなたも忙しそうにしている。一番近くにいた推定20代のイマドキきれいめ男子に声をかける。「一番上の段にある商品が取れないのですが、踏み台をお借りできますか?」。彼は言った。「すみません、踏み台はないんです。ぼくがお取りします」。
私が今日買いたいのはインナーである。自分が着るものの中で一番肌に密着する衣服である。店頭に並んでいる間は、そりゃ、数ある商品の中の1アイテムだろう。だが、ひとたび客が購入すれば、その人にとっては、とてもプライベートな一枚となるのだ。いくら安価で、スポーティーなデザインで、ジャブジャブ洗い放題だとしても、それは、私の肌を包む、見ず知らずの他人には見せることのない衣服となるのだ。
とっさに「では、結構です」と答えていた。彼は、きょとんと目を丸くしていた。もちろん、彼は何も悪くない。
背が低い。手が短い。どんなに伸ばしても届かない。知らない男に取ってもらうのも激しく嫌だ。そんな私に残された道。それは、ジャンプ。人目を気にせず、思いきり飛んだ。まるで小学生のように。おかげで今、新しいインナーたちはジャブジャブ洗われ、夏の風に揺れている。